塩顔男子とバツイチ女子
「北斗くん、かっこいいね。惚れた女は守るって。なかなか言えないよ」
「それは鉄則でしょ?どう考えても男の方が強いんだから」
北斗くんて紳士なんだな。きっと。これまでも私の事をちゃんと気遣ってくれてたし。今もそう。傷ついていないのかと心配してくれた。
「ありがとう。ちょっと嬉しかった」
「俺に何でも話してください。なつみさんの話ならいつでも聞くから」
「ねぇ北斗くん、コロコロ変わるよね。顔が」
「えっ」
ほらまた。心底びっくりした顔をしている。
「最初の頃はとっつきにくそうな雰囲気だなって思った。顔も声も落ちついてて、感情が読めないっていうか。でもちょっと口角が上がってたり優しい表情も見たし、この前コンビニで会った時――初めて北斗くんて呼んだじゃない?北斗くん、あの時すごい優しい顔してて今嬉しいのかなって感じた。さっきなんて真ん丸に目見開いてたし、ほんのちょっとだけ眉間にシワ寄ってた」
離婚話から一気に喋ってたから喉がカラカラで。いつの間にか運ばれてきていた梅酒ソーダを流し込む。
「私は北斗くんの喋り方、好き。淡々としてるけど声のトーンが微妙に違うし。普段のシュッとした雰囲気も北斗くんには合ってる」
「…なつみさん、すげえ。そんなに細かい事に気づいてるの、家族以外では蒼と優斗くらいだから」
友達はその二人しかいないんだけど、と北斗くんは苦笑いした。きちんと分かり合える、深く繋がっている人が二人もいるんだからそれはとっても大切で素敵なことだ。