塩顔男子とバツイチ女子
話し込んでいるうちに気づけばお酒も五杯目。北斗くんはノンアルコールに切り替えている。
「北斗くん、大学で何を学んでるの?」
「専攻は経営学。いつか自分で商売してみたいと思ってるんで」
「どんな会社?お店?」
「アパレル」
蒼くんと、服飾の専門学校に通っている優斗くんと一緒にやりたいのだと言う。
「北斗くん、センスいいよね」
会う度に綺麗目な服装で、今日は襟なしのストライプのシャツに紺のロングカーデ、それに細身のジーンズ、キャラメル色のダッフルコート。足元は黒いハイカットスニーカー。
「高校までは服に全然興味なくて。二人の影響なんです」
「影響はたくさん受けた方がいいよ。お互いに刺激になるし、知識も経験も増えるから」
こういう事を言うのはおばさんくさいかなって思うけど。
「俺もそう思います。基本的に一人が好きで、自分の世界に入りがちだから。世間知らずだし。二人がいなかったら、すごい狭い世界で生きてただろうなって」
男同士の友情って女同士とは全然違う気がして羨ましい。
「ねぇ、なつみさんの爪、綺麗」
北斗くんは笑顔で言ってくれた。ここまでちゃんとした笑顔って初めてだ…。今まで微笑む程度だったから。
「ありがとう。出かけるのなんて久しぶりだから、塗ってみた。家帰ったら落としちゃうけどね」
流行りのグレージュ。明日はまた仕事だから、ほんの数時間だけのオシャレ。