塩顔男子とバツイチ女子
「あ、」
「何かいい所あった?」
覗き込んできた蒼がすぐに気づく。
「いいじゃん。ここ人気なんだってよ。うちの母ちゃんが結構前に行ったらしい」
気持ちよさそうだなぁ。なつみさん、立ち仕事だしリラックス出来るかも知れない。
「いや、やっぱダメでしょ。玉木が暴走したらなつみさんに迷惑かかるし」
初対面でなつみさんにあれだけ言った玉木だから、今会ったらどうなるか。
蒼はなぜか周りをキョロキョロ見渡してから俺にぐっと近づく。
「俺に協力すると思って付き合え」
「やっぱ好きなんだな」
「好きっつーか…やっぱ可愛いわけよ。お前となつみさんがウソでもいい感じなとこを見せれば、美白ももう諦めるかも知れないじゃん」
「それで、俺にしとけよ的な」
「そういう事だわ。つか自分の事には鈍感なのにさすが人間観察は得意だよな」
大きなお世話だよ。蒼の言う通りに事が進むとは思えないんだけど。
でもなつみさんに連絡する口実が出来た事はちょっと嬉しい。なつみさんから連絡はないし、俺もしてない。
かくして俺は蒼の口車に乗ってしまった。最近ほんとに迷走してる。
どうやら俺はなつみさんが絡むと普段と違う行動を取るらしい。
後でなつみさんに予定を聞いてみよう。蒼に渡されたパンフレットをリュックにしまった。