塩顔男子とバツイチ女子
「なつみちゃん」
声をかけられて振り向くと、車椅子に乗った山城さんが向かってきていた。
「山城さん。ちょうどお部屋に迎えに行こうと思ってたんですよ。お買い物の日でしたね」
ホームでは週三回に分けて個々に買い物に行く予定を組んでいる。ここら辺は車がないと不便だから、同じ行き先の人はまとめて、それ以外の人は個別に。
山城さんは冬物の新しいルームウェアが欲しいと言っていたから、近くのお店に行く事になっていた。
「みすみちゃん、元気にしてる?」
「はい。相変わらず。お芝居観に行ったり、コンサート行ったり私よりずっとアクティブですよ」
車椅子を押しながら部屋に向かう。山城さんはばあちゃんの友達で、お互い農家に嫁いできてからずっと仲が良い。山城さんは二年前にこのホームに入居した。農作業中に腰を痛めて以来、歩行が辛くなったらしく、家にいても一人の時間が多く不便だからと入居を選んだという。
「久しぶりにみすみちゃんのお店にも行きたいわねぇ」
「それじゃ買い物の帰りに寄りましょうか」
「いいの?」
「もちろん。今日は私は山城さんだけなんで。時間あるから」
お店空いてるといいんだけどな。小さい店だし昔から常連さんが多いからすごく混んでるって事はないと思うけど。