塩顔男子とバツイチ女子
「あったかーい。気持ちいい」
「なつみさん、立ち仕事でしょ?だからちょっとでも疲れが取れればと思って」
バーベキュー場から歩いて10分くらいの所に足湯がある。屋根はあるけど囲いがないから寒いけど足が暖かいから体がポカポカしてくる。俺達以外は誰もいなくて貸切状態。
玉木が一緒に行くと言い張ったけれど、終電に間に合わなくなるとマズイから片付けを…という蒼の一言で思いとどまってくれた。もちろん怒って蒼に八つ当たりしていたけど。
「うまっ」
焦げた味噌が香ばしくて。おにぎりの外はパリパリ、中は柔らかくて美味しい。
「これ美味しいよね。子どもの頃から好き」
幸せそうに食べているなつみさんが可愛い。
「なつみさん、ごめんね。俺の嘘のせいで」
「…別にいいんじゃない。今、楽しいし」
「あんなにうるさかったのに?」
俺からしたらいつもの事だけど(玉木が加わって更にうるさくなった)。高校時代から蒼と優斗とは何でも遠慮せずに言い合ってきたし、元々蒼はおしゃべり。
「賑やかなの、嫌いじゃないよ。みんなの仲良さそうな感じが伝わってきて楽しかったもん。美白ちゃんも本当に好きなんだね。北斗くんが」
「玉木が純粋に俺を好きかは分かりません。俺が振り向かない事が悔しくて意地になってたって、前に言われたから」
それでビンタされたんだけど。でもその人の気持ちなんて結局は本人にしか分からない。隣にいるなつみさんが本当は俺のついた嘘を鬱陶しく思っていても、俺には分からない。