塩顔男子とバツイチ女子
「意地半分、残りの半分は本気で好き、ってところじゃないかな?蒼くんの事はどうなんだろうね。完全に友達って感じ?」
「多分。蒼は一度フラれてるし、玉木も蒼は恋愛対象ではないと思う」
なつみさんは空を見上げながら両手で口を覆って息を吐いた。鼻の頭が少し赤くなってる。
「なつみさん、手」
「手?」
なつみさんの両手を握ると、びっくりするくらい冷たかった。
「すみません。冷えちゃって」
「ううん。足が暖かいから平気。北斗くんも冷たくなってるよ」
「なつみさん、もうちょっとこっち来て」
一人分開いていた距離が、肩がくっつきそうなくらい近づく。なつみさんの右手を握ると、そのまま自分のコートのポケットに入れた。
「左手も出して」
「どうするの?」
不思議そうに差し出してくれた手を右手でしっかり握る。もうポケットには入らないから、しばらくこうして手を握っていたら暖かくなるかな?
「握ってる」
なつみさんがフッと笑った。
「ごめん。北斗くん、可愛いなぁって思って。真面目な顔でベタな事するから」
「…全然考えてなかった。ただ、なつみさんの手が暖まればいいと思って」
ベタな行動だなんて考えてもなかったから、急に恥ずかしくなる。
「ありがとう」
「もうちょっとこのままでもいいですか?」
「うん」
そう言ってなつみさんは笑った。なつみさんの笑顔が一番好きだ。なつみさんになら可愛いって言われるのも悪くないと思った。