塩顔男子とバツイチ女子
7.それぞれの時間
土曜日の昼下がり、私は実家のコタツに入って祥太に離乳食を食べさせている。
香ちゃんが用意して置いてくれたもので、鶏肉とお豆腐のお団子には和風のあんがかかっていて、にんじんに玉ねぎ、細かく切った椎茸も入っている。軟飯の上には塩抜きしたしらすと細かく散らした海苔。それからほうれん草とさつまいものお味噌。私には大人用にしっかり味付けしたものを作ってくれていたけれど、祥太のダシがしっかりきいたお味噌汁も私は好きだ。
「なつみ、祥太の着替えとか分かるわよね」
「うん。タンスの中でしょ」
居間の隣にある和室は祥太の遊び部屋と化していて、そこに着替えもおもちゃも絵本もお昼寝布団も何でも揃っている。
「ミルクの量は香ちゃんが書き置きしてあるから」
今は便利な時代。粉ミルクがスティックタイプやキューブになっていたりして。哺乳瓶も電子レンジで消毒出来るし。
「あと、おやつは戸棚の中ね」
「何あげてもいいんでしょ?香ちゃん、言ってた」
「あげ過ぎないように」
赤ちゃん用のおせんべい(口に入れるとすぐ溶けるやつ)、卵ボーロ、ウエハース、蒸しパンがレンジで作れるミックス粉…とにかく色々な物がストックされている。
「帰ってくるの遅くなると思うからよろしくね」
「うん。お土産よろしく」
「バカ。私は遊びに行くんじゃないのよ」
バカとは何だ。ちゃんと無報酬で手伝ってるのに(当たり前だけど)。お土産くらい買ってきてくれてもいいじゃない。