塩顔男子とバツイチ女子
「北斗。食事にするけど、どう?食べれる?」
「うん。食べる。腹減った」
朝ご飯はほとんど食べれなくて、処方された薬を飲んだらそのままソファーで寝落ちしていたらしい。
重たい体を起こすと、母がテーブルに小さな土鍋を置いてくれた。いい匂いがする。
「うどん煮たから。食べれる分だけでいいわよ」
「ありがとう…」
ラグに腰を下ろして蓋を開ける。立ち上る湯気と鰹ダシのいい匂い。煮込みうどんにはたっぷりのネギ、それから卵とナルトが少し。
「食べたらちゃんとベッドで寝なさい。治るものも治らないわよ」
「分かってる。薬飲むと眠くなっちゃって…。体が重いから動くの怠いし」
一昨日、授業中に少し頭が痛くて。そしたらその後のバイト中に寒気がして、家に帰る頃には怠くて仕方なかった。それで昨日の朝起きたら頭がぼんやりしていて、熱が出ていた。頭とお腹が痛くて病院に行くだけでも一苦労。
「はぁーあ。こういう時に看病してくれる子でもいれば、私も楽出来るのに」
「…具合が悪い息子にそんなこと言う?」
「あら、具合でも悪くなきゃ普段の当たり前の生活に有り難みがないじゃない。これが一人暮らしで誰も頼れる相手がいなかったら、全部自分でやらなくちゃいけないのよ」
それはそうだけど。今するような話じゃない。余計に具合悪くなりそう…。
「いないの?誰かいい子は」
「…いるような…いないような?」
「ハッキリしないとそのうち変な女に騙されて結婚する事になるわよ。…あ、でも北斗はその心配はないか。まず、他人に興味がないもんね」
母はアハハと大笑いしている。若干悔しいけど当たっているから何も言い返せない。