塩顔男子とバツイチ女子
「…蒼に言われた。一目惚れしたんだろって。
間違いなくその瞬間に恋に落ちてるのに自分で気づいてないって」
「一目惚れ?!北斗が?!」
「そんな驚く?」
母はこれ以上ないくらい目を見開いて、口も開いている。
うどんを食べると、ダシの味がふんわりと口の中に広がった。お腹が減っているのに食欲は無くて、でもこの薄味が美味しいから食べられそうな気がする。
「で?どんな子なの」
「年上。二十八歳」
「結構上ね。でもお兄ちゃんとそんなに変わらないか」
兄貴は二十六歳で東京で働いている。俺とは正反対で社交的。誰ともすぐ仲良くなれるような――蒼みたいな明るい性格だ。
「美人?」
「うん。綺麗だし可愛い。バリバリ仕事してて、俺の些細な変化とかちゃんと気づいてくれるような人」
そういえばなつみさん、どうしてるかな…。バーベキューの日、俺は行き帰りなつみさんの車に乗せてもらって。帰りは蒼たちも乗っていたんだけど。あれから一週間、連絡してない。
俺は本当にこまめに連絡してみるって事が出来ないなと改めて気づく。
「好きならちゃんと捕まえておかないと。あんた、高校時代に付き合ってた子にフラれた理由憶えてる?」
母は呆れたようにため息をついた。
「憶えてない」
「インドア過ぎてフラれたってあの当時、蒼くんが言ってたわよ。それで私と蒼くん、あまりにくだらなさ過ぎて大笑いしたもの」
今思い出しても笑える、と母は思い出し笑いをしている。