塩顔男子とバツイチ女子
「祥太~」
公園に来たはいいものの、何をしていても寒い。祥太はすべり台、ブランコを繰り返し楽しんで今は砂場で遊んでいる。私が買ってあげたキャラ物の砂場セット。バケツとスコップと熊手、それから車や動物の型。
名前を呼ばれている事にも気づかないほど夢中になっている。
砂場の近くのベンチに座って、タンブラーからコーヒーを啜る。母親って偉いなぁ。毎日食事を作って、こうして遊ばせて、お風呂に寝かしつけ。それから家事もこなすんだから。
ポケットに入れていたスマホが鳴って手にすると、北斗くんからメッセージが入っていた。
“なつみさん何してるかなぁって思って”
こんな時間に北斗くんから連絡が来るなんて珍しい。いつもは昼間に連絡なんてないから。
“久しぶり。甥っ子と公園来てるよ。色々あって今日は私が一日子守りなんだ”
さっき撮った祥太の写真も送るとすぐに既読がついた。ブランコに乗って楽しそうに笑っている写真。
“なつみママだ。見てみたいな”
“見ても何も特別な事ないよ?世の中のお母さんて偉いなってさっき思ってた。北斗くんは何してるの?”
祥太はバケツに目一杯砂を詰め込んでいる。こんな単純作業でも目をキラキラさせて楽しめるんだから子どもはすごい。私にもこういう時期があったんだろうけれど、まったく想像つかないし。
“ちょっと体調崩してて。昨日から大学休んでます。でもピークは越えたし、怠いけど熱が下がれば多分大丈夫”
「えっ、風邪?」
インフルエンザに胃腸炎が流行ってきてるし、ノロウィルスもある。
“普通の風邪なの?”
“はい。実はなつみさんにお願いがあって”