塩顔男子とバツイチ女子
「北斗!ベッドで寝なさいって言ってるでしょ!…ニヤニヤしちゃってどうしたの」
「ニヤニヤなんてしてない」
自分でも顔が緩んでる事に気づいてはいたけど。戻すのがちょっと遅かったか…。
母は洗濯物と布団を取り込んで、ついでに俺の部屋を換気してリビングに戻って来た。
「それは女の子絡みだな」
俺が持っているスマホを指さして言う。ついさっきまで、なつみさんとやり取りしていた。甥っ子の祥太くんの子守りをしている真っ只中、俺に付き合ってくれて。
「さっき言ってた子?」
「…まあ」
薬も効いてきて、なつみさんとやり取りした事で何だかホッとして眠気が来ていたのに、母のせいで目が覚めてしまった。ニヤニヤしていた自分が悪いけど。
「自分で言うのもなんだけど、私は二人ともそれなりにカッコよく産んであげたつもりなのよね」
「それは俺には何とも言えないけど」
兄貴は俺よりハッキリした顔立ちで、醤油顔って感じかな。それに比べて俺は薄い。塩顔ってやつ。目立たない、人の印象に残らない顔だと自分では思う。蒼がずいぶん前に「お前、塩顔じゃね?流行ってんだって。きっとモテるよ」なんて言われた。モテてないけど。
「見た目もそうだけど、中身も育て方が良かったかな」
「俺は結構変わってるけど」
昔から自分の世界に入りがちだったからなのか、反抗期はなかった。母は多少口うるさいけどウザいとも思わなかったし。昔は今よりももっとずっと人に興味が無くて、友達を作るのも苦手だった。
「まぁね、あんたの事は色々あったけど。それはもう仕方ないわよ」