塩顔男子とバツイチ女子
8.美白の告白
「相楽くん!」
週明け、ようやく大学に登校するとすぐに呼び止められた。
「おはよう。もう体調大丈夫なの?」
「まだちょっと怠いけど…これ以上休むとヤバいし」
玉木は心配そうに俺を見ている。少し咳が出ているからマスクをしているけれど、熱はもう下がった。単位を落としたくないし、今日は一限から五限まであるから来ないわけにはいかない。
「これ」
玉木は分厚いクリアファイルを差し出した。
「何?」
「相楽くんが休んでた分の授業のコピー。全部じゃないんだけど…相楽くんと同じ授業取ってる友達がいるから、頼んでコピーさせてもらったの」
玉木の思いがけない行動に心底驚いてしまって、俺はただクリアファイルを見つめていた。
授業を休んだ時にはいつも直接、教授に聞きに行っていたから。
「…ありがとう」
「うん。あ、これは返さなくていいから。私の友達のだし気にしないで。それから無理しないでね。じゃあ先に行くね」
俺が病み上がりだから気を遣ってくれているのかは分からないけれど、どこかいつもと違うような気がして。喋り方も静かだったし。どこか素っ気ないっていうか。
玉木から受け取ったクリアファイルをリュックに詰め込みながら教室へ向かった。
後で蒼に連絡してみよう。玉木には今までまったく興味が湧かなかったのに些細な変化が気になるなんて。
不思議だ。