塩顔男子とバツイチ女子
俺と玉木は本当にお互いの事を何も知らない。玉木は俺の好き嫌いも知らないし、俺も玉木の好き嫌いを知らない。普段どんな生活をしているのかも、どんな時間を過ごしているのかも。一方的に追いかけられ続けて、それを拒否して。お互いを知る時間も無かった。
「それに何より、なつみさんが大人だって事に気づいたって。美白ツンケンしてたじゃん。でもなつみさんは美白ちゃんでいいかって聞いたり、俺らが話してる時は絶対口出したりせずに聞き役になってくれてさ。お前はお前で笑ったりマジでムッとしたり」
「それはいつも通りじゃん。俺だって笑うし怒るし。玉木だってそれは知ってると思うけど。玉木に怒った事あるよ」
それで結果、ビンタされて。あの時は俺も少し感情的になって言いすぎたんだけど。
「そういう事じゃないんだよ。それはお前が美白にマジで怒った事だろ。なんつーか…友達同士のやり取りっていうの?本気じゃないやつ 。それに何より、なつみさんと一緒にいる北斗の顔が穏やかでショックだったって」
「…そんなに変わってないつもりだけど」
「俺も別に感じなかったけどね。だからそこだよ。普段通りの北斗だけど、美白にしたら自分は見れない姿だったってこと」
なつみさんと一緒にいる時に自分がどんな表情をしているかなんて分からない。ただ、蒼や優斗といる時と同じでリラックスしている。なつみさんは俺の表情がコロコロ変わるって言ってたし、間違いないと思う。
「前に玉木にも言ったけど、そもそも俺と玉木って何も知らない所から始まってるじゃん。知らない事がたくさんあって当たり前だと思うけど」
「美白だけ責められねーぞ?お前だって興味ないとは言え、何にも知ろうとしてないんだから」