塩顔男子とバツイチ女子
結局定時では上がれなくて、気がつけば21時を回っていた。
あれから大島さんの診察が終わってすぐに山城さんの部屋へ行って。布団一色とシーツも交換して。ベッドメイキングが終わってから使えなくなった布団をいくつか車に運んでクリーニングに出しに行った。
症状が酷い人は点滴を受けて、看護師さん二人では足りないからお休みの人に連絡をして急遽来てもらったり、私もシフトの変更をしたり…。夜勤に引き継ぎもままならないまま、胃腸炎の対応に追われた。
菌を家に持って帰らないように、服はホームで洗濯をしてからそのまま干して、私服に着替えてから外に出た。いつもならそのまま出勤して帰るんだけど。こういう事態の時は感染を最小限に抑えるために、職員はみんなそうしている。
『市川、悪いんだけど明日夜勤入ってくれない?それと今週休み無しで』
『えっ』
『夜の方がどうしても人数少ないだろ。体調悪いと手が取られるから。俺も今週は夜勤増やすけど市川も頼むよ』
夜勤専門の人も体調を崩していたり、家族がそうだったりで、数少ない私たち社員がフォローに入る他ないという事だった。
車に乗り込むと自然と大きなため息がこぼれた。今日は昼休みを最後に休憩も取れなかったし、脚が浮腫んで重たい。
明日から三連続で夜勤。休みも無くなったし、早く帰って体力を蓄えなければと思うけど疲れ過ぎて気力がない。
非常事態だから上司も休み無し、昼間出勤して中抜けからの夜勤なんて日もあるわけで。それに比べたら私の三連続夜勤なんてかなり有難い。家に帰れる時間があるんだから。
エンジンをかけた時、スマホが鳴った。そういえば全然見てなかった…。