塩顔男子とバツイチ女子
「美白ちゃん、何飲む」
「えっ、私の名前…」
みすみさんがさらりと呼んだから、俺もびっくりして。二人してみすみさんの顔を見てしまった。
「いつだったか蒼くんが来て。今はその話じゃないわね」
「じゃあ、ミルクティーを」
玉木は一席開けて座った。
「あっちの方がいい?」
テーブル席を指さして聞くと、玉木はここでいいと言った。
「すごくびっくりした。蒼くんから、相楽くんが私と話したいって言ってるって聞いて」
「一昨日はありがとう」
「ノート?役に立った?」
「かなり。昨日小テストがあったから本当に助かった」
玉木は安心したように微笑んで、良かったと言った。こんなふうに柔らかい笑顔を見たのは初めてだ。
「蒼から聞いた。バーベキューの日のこと」
「うん。ほぼ全部話しちゃったって言ってたから、あっけらかんと。頭にきた。今度会ったら引っぱたいちゃうかも」
蒼の事だから心のこもってない謝罪をしたに違いない。ワリーな!とか、いちいち気にすんなよ!とか余計な一言をつけて。それが蒼なりの心を許している態度なんだけど。
「前に相楽くんに怒られた時に言ったけど、振り向いてくれない悔しさがあって、どうにか相楽くんに興味を持ってもらいたい…って意地になってた。もちろん本気で好きなんだよ。けど…なつみさんと一緒にいる相楽くんは私がまったく知らない顔だった」
玉木は少し俯いて、両手をギュッと握っている。
「そもそも興味を持ってもらえなくて当たり前なのに。相楽くんを追いかけ回して…そんなの誰だって嫌だよね。しつこく追いかけ回してくる人となんて関わりたくないよね」
…それは何とも言えないのが正直なところ。蒼はグイグイ来たし。俺が引いていてもお構いなしに。