塩顔男子とバツイチ女子



「相楽くん、女子に人気あるでしょ。カッコイイって。私の友達もそうだった。でも私は相楽くんと学部が違うし、全然見かける事が無くて。いつだったか…中庭で蒼くんと相楽くんが大笑いしてる姿を偶然見かけたの。無表情で無口で冷静沈着って言われてる相楽くんの違う一面だった」


大学に入ってからなぜだか分からないけど顔目当てで追いかけ回されたり、いつの間にか取り巻きが出来ていたり…俺は全然気づいていなかったんだけど。その度に蒼が追い払ってくれていて、お前がムダにモテるから俺が目立たないなんて文句を言われたりもしたっけ。


「…相楽くんは一人が好きなんでしょう?」

「うん、昔からそう。物心ついた時から。別に寂しいって思う事もないし」


蒼と知り合うまでは友達なんていなかったし。学校で喋ったりする相手はいたけど。


「私は一人は嫌い。だからこそ相楽くんに惹かれたんだと思う。一人の時間を楽しめるところに」


みすみさんがカウンターにそっとティーカップを置いた。玉木は少し笑顔になってそれを受け取る。角砂糖を二つ。それからミルクを注ぐ。


「私、昔からチヤホヤされてきたんだ。その分、女子には嫌われたよ。自分が好きな男の子にはまったく相手にされなかったけど。…高校時代が一番酷かったんだ。仲良くしてくれてた一つ上の先輩の彼氏が、私に告白してきたの。私は全然そんな気無かったから断った。でも告白されたところをたまたま見られてて…先輩の友達に。話は一気に広がった。男子にチヤホヤされて調子に乗って、先輩の彼氏をたぶらかしてるって」


少しぬるくなったコーヒーをすする。玉木がそんなドロドロした人間関係に巻き込まれていたなんて…。

「昔からね、ずっとそうなの。友達が好きな男の子が私を好きとか。笑っちゃうよね」
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