塩顔男子とバツイチ女子
全然笑うような話なんかじゃない。
「高校時代にハブられて、色眼鏡で見られて…でも行かなくなったら負けでしょ。噂話を認めた事になる。だから学校には行った。それで誰も知ってる人がいない大学に行って好きな事を勉強して、ちゃんと一人で生きていけるようになろうって思って」
「地元はどこなの」
「東京。こっちには叔母がいて。父のお姉さん家族の家なんだけど。居候させてもらってる。従姉妹もいるし楽しいよ」
蒼の家と二駅違いだという事や、ショッピングモールの中にある雑貨屋でアルバイトしている事も話してくれた。
「前に、私が色んな合コンに行ってるって情報があるって言ってたでしょ?」
「数合わせって言ってたっけ」
「大して親しくもない子から誘われて。玉木さんがいれば男子が奢ってくれるだろうし、女子も好きな男を玉木さんに取られないように積極的になるからちょうどイイって」
「玉木、踏み台じゃん」
玉木の話を聞きながら自分がどれだけ酷い事を言ったか反省した。
「俺、前に酷い事言ったよね。見た目で決めつけて判断したり、何も知らないのに根っから決めつけて否定するヤツは嫌いだって。俺自身がそうだった。玉木の事を何一つ知らないのに。本当にごめん」
玉木の顔をちゃんと見て頭を下げると、玉木は慌てたように少し高い声でやめてと言った。
「謝るのは私の方だから。自分がそうやって散々嫌な思いをしてきたのに…言い訳だけど、恋愛をした事がないから、相楽くんを好きになって周りが見えなくなってた。追いかけ回したりして本当にごめんなさい」
玉木が外見に気を使ったり、明るく賑やかにしているのは周りの女子と上手くやっていくための手段なんだろう。でも俺はこっちの――今の落ち着いたトーンの玉木の方がいい。ゆっくり話してみようって思える。