塩顔男子とバツイチ女子
「そんで?玉木が諦めるまで、その人に協力してもらうわけ」
「いや。さすがにそれは断ったよ。別に俺の片思いって事にしとけばいいんだし」
好きな人がいないっていうのは隙に入り込もうとされるわね、って昨日みすみさんに言われた。それなら片思いしている事にしておけばまだ良いかも知れないと思って。そんなに効果はないだろうけど。
「いっその事、その人に彼女のフリしてもらえばいいじゃん。玉木に遭遇しそうな時を狙ってさ、イチャついてる所でも見せてやれば。さすがに諦めるんじゃねーの」
「そもそもそういうシチュエーションがないから」
俺はごく平凡な静かな生活が好きなのに。
今までだって玉木の事は全然気にしてなかった(ハッキリ言うと眼中にない)。どこか他人事のように見ている自分もいて、よくもまあそんなに追いかけられるもんだ、なんて思ってもいた。
卒業してしまえば進路はバラけるはずなのに。
本当に何で昨日、しくじったのか…。
不思議なんだけど、なつみさんを見てたら自然と言っちゃったんだよな。
俺の好きな人、って。
なつみさんが店に入って来た瞬間からずっと目を離せなかったんだ。