塩顔男子とバツイチ女子


「それと、北斗でいいから」

「えっ?だって相楽くん、前に…」

「うん。呼ばれたくないって言った」


マジなトーンで言ったことを憶えている。よく知りもしない人にいきなり名前で呼ばれるのは嫌だ。でも今はそうじゃない。もちろんまだ知らない事はあるけれど、ちゃんと話せたから。


「北斗でいいよ」


玉木は嬉しそうに笑顔になった。真剣な顔、泣き顔、笑顔。嬉しい時にはちゃんと喜んで、悲しい時や悔しい時はそれを露わにする。そんな普通の事が俺は出来てないと思うから、玉木は感情豊かなんだなと思った。


「私の事も美白でいいよ」

「いや、玉木は玉木」

「何で?なつみさんの事は名前で呼んでるのに」


…そういえば、なつみさんは最初からなつみさんだな。何でだろ。


「北斗くん、連絡先交換しようよ」

「それもちょっと…」

「どうして?!私たち友達にならないの?」


玉木の喋り方が、蒼と喋っている時のうるさい感じになってきていて俺は思わず笑った。


「北斗くん、笑った」

「俺だって笑うよ。玉木、ギャンギャンうるさい」

「じゃあ連絡先教えて!美白って呼んで!」

「ホクちゃん、モテるわねぇ」


みすみさんは笑いながらチーズケーキを出してくれた。ホイップクリームとベリーソースが添えられている。俺はミントが苦手だから玉木のお皿にだけ。


「ホクちゃんと美白ちゃん、似てるわね」

「どこが?」

「真っ直ぐな所。性格は違うけど二人とも自分を持っていて、感情豊かよ。それからいい子ね」


今すぐには玉木との距離感は変わらないだろうけど、友達になるのも悪くないかなと思った。
他愛もない、何でもない話が出来る相手が一人くらい増えてもいいかな、って。

玉木に目をやると嬉しそうにチーズケーキを食べて、美味しいと喜んでいた。
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