塩顔男子とバツイチ女子




「北斗、クリスマスどうすんの」

「どうすんのって?蒼は?」


5限までの授業を終えて外に出ると冷たい空気が一気に肺の中に入ってきて、鼻の奥がツンとした。


「美白誘ってんだけどね。夕方でバイト終わるって言ってたからさ。俺は元々、クリスマスはシフト入れてないし」


そういえば去年のクリスマスは授業終わりに蒼と優斗とイルミネーションを見に行って、メシ食って帰ってきたっけ。男同士ではしゃいじゃって。


「玉木は何て?」

「ヤダって。うるさいクリスマスになっちゃうって言われた」


蒼は俺はうるさくない、美白がギャンギャン言うから俺もそうなる、とボヤいた。


「なつみさん、誘わないの」

「忙しいみたいなんだよね。先週連絡した時に一週間休みが無いって言ってたし」


そろそろ休みが取れていると良いんだけど。なつみさんはどんなに忙しくても頑張るタイプだと思うし、弱音を吐かないから。


「そんなに忙しいの?」

「うん。胃腸炎が蔓延してるって言ってた。なつみさん、社員だから無理しなきゃいけないんだと思う」


なつみさんの疲れた顔が浮かぶ。どんなに疲れていても明るさのある人だから。そういう人だから心配になる。無理して頑張ってストレスが溜まったり体を壊さないだろうかと。


「お前、そういうとこ変だよね。グイグイ行くかと思えば変なとこで躊躇するっていうか。俺なんて美白にボロクソ振られて、この前も断られて今回も断られてんだぜ?ヤダって一撃で。でもまだ諦めてねーからな。なつみさん誘え!」


蒼は目をカッと見開いて、俺に詰め寄るようにして言った。滅多にない蒼のマジな顔と気迫に押されて頷いてしまったけど…。

俺、クリスマスは普通にバイトなんだよな。

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