塩顔男子とバツイチ女子



クリスマスイヴ。私は仕事を終えて実家に来た。祥太へのプレゼントを持って。

イヴという事もあって家の中はクリスマスの飾り付けが施されている。私が子どもの頃はツリーとリースくらいだったから、きっと香ちゃんが飾ったんだろう。


「祥太、良かったわねぇ。オバちゃんがたくさん買ってくれて」


母はおもちゃを箱から出しながら言い放った。確かにオバちゃんだけどさ。激務で疲れ果てて帰ってきた娘の心にグサッと刺さる一撃。


「お姉ちゃん、ありがとう。こんなに高い物」

「いいのいいの。もう、祥太を甘やかす事くらいしか楽しみがないから」

「…姉ちゃん、寂しすぎるだろ」


祥太が好きだという、往年の人気キャラクターの知育玩具と、ジャングルジムと滑り台のセット。香ちゃんにはフェイスパックとスチーマー。いつも頑張っているママにこそプレゼントが必要だと思って。


「わぁ、これ!スチーマー!」

「香ちゃん、いつも頑張ってるから。それ使って綺麗な香ちゃんでいてね」

「お姉ちゃん、本当にありがとう」


嬉しそうな顔を見ているだけで満足。祥太はさっそく知育玩具を手にして遊んでいる。圭はビールを飲みながらジャングルジムと滑り台を組み立てていた。


「なつみ、お正月だけど。仕事なの?」

「うん。大晦日が夜勤、なのに元旦が中番、その後に二連休」

「マジで?!夜勤明けの中番って何。死ぬだろ。姉ちゃん、ヤベー仕事してんな」

「ホント何、だよ。おかしいよね」


圭はそんな職場は絶対に嫌だとブツクサ言っている。私だって嫌だけどね。年末年始はパートさんも休みを取ったりするし、そこはもう数少ない社員がカバーするより他ない。


「だから家帰れないよ。夜勤終わったら仮眠して、そのまま昼前から仕事」

「それならちょうどいいわ。二日と三日はうち来ないでね」
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