塩顔男子とバツイチ女子
昨日の夜は無駄にドキドキしてしまって、寝付きが悪かった。なつみさんの言葉に舞い上がった直後、さらになつみさんから返信が来て。
“北斗くんのテリトリーの中に私も入れてもらえてたらいいなって思ってる”
“考えた事なかったけど、なつみさん、最初から入ってますよ”
本当に不思議なんだけど。みすみさんのお店でなつみさんと初めて会った日、俺はキッパリ玉木を拒否した。自分のテリトリーに入って来てほしくないと。だけどその後、偶然なつみさんと会って自分から話しかけていて。その時にはもうすでになつみさんに心を開いていたんだと思う。
「北斗、今日の予定は?」
コーヒーを飲みながらボーッとしていると母の声がした。昨日は帰ったら、ちょうど親父がケーキを持って帰って来た所で。今年はブッシュドノエルだった。
「バイト終わったらメシ食ってくる」
「デート?」
母はニヤニヤしながら聞いてきた。
「うん」
デート、でいいかな。クリスマスだし。未だになつみさんに恋をしているのかは分かっていないけど、なつみさんに会いたいと思う自分がいるんだから、それはもう恋なんだろう。
「ホントに?また蒼くんと優斗くんじゃないの?北斗にしては素直過ぎる…」
母は茶化すように言ってくる。
「嘘じゃないし」
「…女の子とデートなのに何でそんなに冷めてるの。いつもの事だけど」
「冷めてないよ。元からこういう喋り方じゃん」