切リ取リマスカ?
そんな時だった。


ふと目を向けた客席に見たことのある後ろ姿を見つけた。


長い髪の毛を1つにくくった楓先輩だ。


楓先輩はたった1人でここに応援に来ていたようだ。


「地味……」


あたしはその姿を見てそう呟いた。


楓先輩の私服は無地の黒いTシャツに黒いジーンズの上下で、可愛げもなにもない。


あたしの知っている楓先輩が着るような服ではなかった。


どうやら切り取ったせいですべての趣味が変わってしまったようだ。


まぁ、目立たれるよりはいいけどね。


高校2年生という一番華やかな時期にあんな服しか着れないなんて、可愛そうかな。


少しだけ、そんな風に感じたのだった。
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