切リ取リマスカ?
☆☆☆

試合は2対3で佐原高校の負け。


応援団はみんな肩を落とし、サッカー界の大物は勝ったチームを祝福した。


あたしは客席から関係者の控室へと移動してきていた。


大雅のお父さんもお母さんも落ち込んだ顔をしていて、何も話さない。


重苦しい空気が立ち込めている中、大雅を待つ。


「今日はよく頑張った」


お父さんがそう呟くのが聞こえて来た。


「そうね。よく頑張ったわ」


お母さんが何度も頷き、そう答える。


「ね、心ちゃん?」


お母さんにそう言われてあたしは頷いた。


大雅は本当によく頑張っていたし、試合はまだ終わりじゃない。


大雅はまだ1年生だし、可能性はまだまだあるし、チャンスもこれから掴むことができる。


その時だったドアがノックされ、大雅が入って来た。


汗にまみれた大雅に胸がグッと締め付けられるのを感じる。
< 119 / 181 >

この作品をシェア

pagetop