切リ取リマスカ?
☆☆☆

放課後に友達と遊ぶなんて、久しぶりな経験だった。


いつもサッカー部の試合を見て、大雅の練習を見てから帰っていたから、遊ぶ時間なんてなかったのだ。


こうして3人で並んで歩くと言うのはあたしにとってとても新鮮な気持ちだった。


「そういえばさ、最近大雅君とデートしてる?」


3人でファミレスに入って席に座ったところで、愛がそう聞いて来た。


突然の質問で、思わずジュースを吹いてしまいそうになる。


「なに、急に?」


「だってさ、部活をやめたら時間があるでしょ? 放課後デートとか羨ましいなぁって思って」


愛はそう言い、目を輝かせている。


恋愛話に興味があるようだ。


「してないよ」


そう答えると、「うそぉ? 恥ずかしいからって嘘ついてるんでしょ?」と、言われてしまった。


「嘘じゃないよ。大雅はすぐ友達と遊びにいっちゃうんだもん」


あたしだって放課後デートとかしてみたいと思っている。


だけど、サッカーをやめたばかりの大雅になかなか言い出せずにいた。


「あのさぁ心」


オレンジジュースを飲んでいた紀子がおずおずと話に入って来る。


「なに?」


「ちょっと言いにくいんだけど、大雅の噂を聞いちゃったんだよね」


「噂?」


あたしは瞬きをして紀子を見た。


紀子はしかめっ面をしたままこちらを見る。
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