切リ取リマスカ?
大雅がファンの子に手を出すなんて考えられない。


だって大雅はあたしにも簡単には手を出さなかったんだから。


サッカーでプロを目指す人間は、精神的にも成長しなきゃいけない。


心の事は大好きだ。


だからこそ、俺は我慢する。


そう言っていたことがある。


だからあたしは大雅になにもされなくても不安にはならなかったし、大雅がファンの子に手を出すなんて、絶対にあり得ない事だと思っていた。


「ねぇ心、このままでいいの?」


紀子がそう聞いてくる。


「そんな噂、嘘だから」


そう答えた自分の声がひどく震えていることに気が付いた。


大雅の事を信じている。


だけど、今の大雅はあたしの知っている大雅じゃない。


その不安は想像以上に大きいみたいだ。


「心……」


紀子は眉を下げて、あたしを見たのだった。
< 135 / 181 >

この作品をシェア

pagetop