切リ取リマスカ?
ダメでもいい。


少しでも距離を縮めた。


そう思ったあたしは毎日大雅の練習を見に行くようになっていた。


オレンジ色に染まるグラウンドで走る大雅はいつ見ても変わる事なく素敵な存在だった。


大雅の練習風景を見れば見るほどあたしの心は大雅に惹かれて行っていた。


『お前にお願いがあるんだけど』


ある日大雅がクラスでそう声をかけてくれたことで、あたしたちの関係は大きく変化した。


『な、なに?』


その時のあたしは緊張して声が裏返っていたことを、今でもよく覚えている。


『練習を見に毎日来てくれてるだろ?』


『う、うん』


『できたらさ、声上げて応援してくれねぇかなって、思って』


大雅はそう言いながら照れくさそうに頭をかいた。


『え、い、いいの?』


声を上げれば迷惑になると思って、いつも小さな声で応援していたのだ。


『当たり前だろ。ってか、そっちの方がやる気出るしさ』


『わ、わかった。明日から……ううん、今日から頑張って応援するね!』


『おうサンキュな』


大雅は顔を真っ赤に染めてそう言ったのだ。


あの時は、あたしの顔もきっと真っ赤になっていただろう。
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