切リ取リマスカ?
☆☆☆

大雅と初めて行ったデートは家の近くの公園だった。


お互い中学生でお金もなく、行く場所もなかったから公園や図書館にはよく言っていた。


2人で並んでベンチに座っているだけで心臓がドキドキして、手を繋いで歩くだけで幸せを胸一杯に感じる事ができていた。


昔の思い出をたどっていると、次第に涙が滲み始めていた。


あたしは確かに大雅の事が好きだった。


誰よりも、大好きだった。


大雅の事を信じていたし、一緒にいるだけで何もいらないと思えていた。


それが、どうしてこんな事になったんだろう。


あの綺麗な気持ちは一体どこへ消えてしまったんだろう。


取り戻したくて、あたしは自分の胸に手を当てた。


規則正しく心臓が動いているのを感じる。


こんなに苦しくて涙があふれて来るのに、人は簡単には死ぬことなんてできないんだ。


今の大雅を受け入れ、自分なりに乗り越えていくしか方法はない。


「大雅……どこ……?」


公園にもいない、図書館にもいない。


思い出のある場所を探せば探すほど、あたしと大雅の思い出がどんどん消えて行くようだった。


陽は暮れ始めて気が付けば放課後と同じ時間になっていた。


お昼も食べれていないけれど、お腹はすいていなかった。


ご飯なんて食べている場合じゃないと、体は知っているようだった。


大雅との思い出の場所を一通り探し終えたあたしは、公園のベンチに座っていた。


大雅の姿はどこにもない。
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