切リ取リマスカ?
あたしは大雅に引っ張られるようにして教室を出る。


大雅が不穏な空気を身にまとっているのがわかった。


人気のない階段まできて、大雅はようやく足を止めた。


「なに?」


「お前、俺の写真を見せてるってほんとか?」


そう聞かれて、内心ドキッとする。


しかし表情には出さず、笑顔を浮かべた。


「大雅の練習の写真でしょ? みんなカッコいいって言ってくれてるよ」


「写真を撮るのは心だから許してたんだ。それを安易に人に見せるのはやめてくれよ」


大雅が眉を吊り上げる。


本当に怒っているようで、あたしは大雅から一歩離れた。


「でも、大雅の頑張りはみんなに見てもらわないと!」


「心配しなくても監督はちゃんと見てくれてるよ」


「嘘つかないでよ。大雅はいつも1人で練習してるじゃん」


あたしは顔をしかめて大雅を見つめ返した。


これまでずっと大雅の練習を見て来たけれど、大雅は人知れず練習をするタイプだ。


監督の目につかない所で頑張っている。


「練習風景を見ていなくたって監督にはわかるものなんだよ」


大雅は呆れたようにため息を吐き出した。


その仕草に胸が痛む。
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