切リ取リマスカ?
☆☆☆

「心、今日は元気ないね?」


登校途中バッタリ会った愛にそう言われて、あたしは左右に首を振った。


「昨日は眠れなくて……」


普段なら1日寝ないくらい平気だった。


でも昨日は色んな感情が入り乱れてしまい、とても疲れてしまったのだ。


「そうなんだ? 大雅君の事が気になって?」


そう言われて、あたしは自分の心臓がドクンッと大きく跳ねるのを感じていた。


できるだけ顔には出さないようにしたけれど、愛は不振そうな表情を浮かべている。


「でも、大雅君は落ち込んだりはしてなかったよね?」


「そ、そうだね。たぶん大丈夫だと思うけど」


あたしはそう言い、無理やり笑顔を作った。


2人で教室へ向かうと廊下に人だかりができているのが見えた。


廊下を完全にふさいでしまうくらいの人数がいて、あたしと愛は立ち止まる。


「なにがあったんだろ?」


愛が好奇心から人だかりの中を確認したそうに背伸びをしている。


けれど、あたしたちの身長じゃ簡単に見る事はできなさそうだ。


「ねぇ、どうしたの?」


このままじゃ教室に入る事も出来ないと思い、あたしは後ろの方に立っていた男子生徒にそう声をかけた。


振り返った男子生徒には見覚えがあり、「あ」と、呟く。
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