切リ取リマスカ?
☆☆☆

院内に足を踏み入れた瞬間、薬品の匂いが鼻孔を刺激した。


なんど嗅いでも馴れる事のない匂いだ。


この匂いを感じると自然と身構えてしまう。


それは大雅も同じようで、病院に足を踏み入れた瞬間少しだけ背筋が伸びていた。


2人で受付に行き、琉斗の病室を聞いた。


「今はまだ手術中かもしれない」


エレベーターで移動しながら大雅はそう言った。


「そっか……」


朝事故にあってまだ手術中ということは、かなり大がかりな手術になってるのだろう。


足を切断するのだ、そのくらい時間はかかって当然か。


受付で聞いた病室まで移動すると、そこには琉斗の両親がいた。


ベッドの中は空だ。


「大雅君に心ちゃん。こんな時間に来てくれたの!?」


泣きはらした顔をしているお母さんが慌てながらそう言った。


「2人とも、まだ授業中だろう」


琉斗のお父さんもそう言い、心配してくれている。


「早退してきました。とても、勉強なんてしている場合じゃなくて……」


大雅はそう言い、空のベッドへと視線を移動させた。


「せっかく来てくれたのに、琉斗はまた手術中なの」


「わかってました……」


大雅はそう言い、拳を握りしめた。
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