切リ取リマスカ?
「だって、帰りの邪魔もしたくないから」


あたしはそう言って大雅を見た。


大雅は驚いたように目を丸くしている。


「心、知ってたのか」


「知ってるよ。帰りながら試合のいいイメージを思い浮かべていることくらい」


あたしはそう言い、笑顔になった。


大雅の事ならなんでも知ってる。


だから手助けしたいと思ったんだもん。


「そっか……。イメージトレーニングの邪魔になんてならないから、これからは一緒に帰ろう、な?」
そう言い、家の前で足をあたしの止める大雅。



「ありがとう、大雅」


「いや、俺の方こそ……」



そこまで言い、大雅の顔が近づいてくる。



大雅の唇が少しだけ触れて、そしてすぐに離れていった。


心の中に火がともったようにポッと暖かくなる。


「じゃぁな」


「うん……。また明日ね」


あたしはそう言い、大雅に手を振ったのだった。

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