【短編】クラブ・ラグジュアリフロアで逢いましょう
*-*-*

ピチピチ、ちゅんちゅん。爽やかな小鳥の声とピアノの調べが耳をくすぐる。ホテルのBGMだ。壁にもたれて寝ていたから背中と腰が痛む。伸びをしようと腕を動かそうとしたら、私の肩にもたれかかる何か。

設楽さん。

スースーと規則的な寝息を立てて、私に寄りかかり眠っていた。整った顔に窓からの光が差し込む。まぶたが動き、彼も目を覚ました。

あまりの近さにドキリとした。

「おはよう……ござい、ます」
「おはよう。ごめん、いつの間にか僕が寄りかかっていたね」
「いえ……」

なんとはなしに見つめ合う。私の胸はとくんとくんと音を立てた。彼も目を逸らす気配はない。射貫かれたように私は動けなくなった。

「あ、止んだね、雪」

大きな窓から真っ白な明かりが差し込んでいた。ビルの合間からのぞく太陽と照らされた雪の相乗効果でさらに眩しく輝いていた。


*-*-*

そのあとはラグジュアリフロアにもどってラウンジで朝食を取った。部屋を譲ったご家族とも顔を合わせてしまい、何度も頭を下げられた。宿泊代金はホテルの計らいで階下のツインと同料金にしてもらったことを聞き、私も彼も胸をなでおろした。そしてホテルから私たちにプレゼントが。

「今回ご協力いただいたお礼です」

それぞれに封筒が渡された。中にはクラブ・ラグジュアリフロアの利用チケットが入っている。
< 6 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop