【短編】クラブ・ラグジュアリフロアで逢いましょう
私はこの近くに勤めているから使う機会もある。設楽さんに聞いてみると、上京する機会は年に何度かあるけど、こっちのほうにはあまり来ないとのこと。

「私、買い取りましょうか」
「いや、いい」
「でも」
「また来たいから。いいホテルだし、今度はプライベートで来るよ」
「そうですね」

プライベートで……その言葉にチクリと胸が痛んだ。こんなに素敵な人だ、恋人がいるに決まってる。

ふう、と気付かれない程度のため息をついてうつむいた。

「君さえよければ、君に会いに来てもいい?」
「え……?」

思わず顔を上げた。設楽さんは微笑んで優しく私を見つめる。

「ダメかな」
「いえ! とんでもない! 私も嬉しいです。あっ……その!」

愛の告白をしてしまったようで恥ずかしさに顔が熱くなった。

じゃあ連絡先を、と彼は手帳を取り出した。私も慌てて手帳を出す。


朝食を終えてホテルをあとにする。新しい恋に私は足取りも軽やかにオフィスに向かった。


(おわり)


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