悪役ヒロインは恋してる
翌日学校に行くと、下駄箱の前で伶音君と同じ中学出身の女子数名に待ち伏せされていた。
昨日伶音君の周りで騒いでいた子達だ。
憎々しげに私のことを睨んでいる。
憧れの王子様の前で恥をかかされたこと、私が彼と名前を呼び合うことが気に入らないのだろう。
中学時代からファンの間では不可侵協定が結ばれていたらしく、抜け駆けや過度な接触は禁止だったのだそうだ。
そういう訳で伶音君は中学3年間誰とも付き合うことなく終わったのだという。
そして、その均衡を高校入学初日に乱したのが私だったのだ。
そのような事を、ギャンギャンと喚く彼女達の耳障りな言葉から解読することが出来た。
知るかそんなもの、というのが正直な感想だ。
中学の頃にどんな馬鹿馬鹿しい協定が結ばれていたとしても、私には関係ない。
そんなしがらみにとらわれず、私は私の思うとおりにやらせてもらう。
手始めに、このうるさい女を黙らせなければならない。
彼女達はいずれ私の邪魔になるだろう。
将来の足枷の芽を摘んでおくのだ。
「弱者の集団の癖に、うるさいわね」
リーダー格の女を睨みつけ、低い声で言うと、それが合図だったかのように下駄箱の影から10人程の男女がわらわらと姿を現した。
全員中学時代の私の取り巻きだ。
正直この展開は予想できていた。
昨日の時点で収集をかけておいたのだ。
昨日は女子のみを集めたが、それが私の全力だと思われては困る。
先程まで騒いでいた彼女らは、突然現れた集団に驚いている。
「これからは私の行動範囲内で、好き勝手できると思わない方がいいわ」
リーダー格の女と、お互いの鼻がぶつかりそうな距離にまで近づく。
頭頂部に黒が見えた中途半端な金髪。
派手な見た目をした彼女の口元がひきつった。
「この私を敵に回して、それでもまだ平和な生活が送れるなんて妄想、するだけ無駄よ」
「いきがったことぬかしてんじゃ……」
「口を慎みなさい!」
気丈ぶって言い返そうとする彼女の言葉を遮り、ぴしゃりと言い放つ。
男子のひとりが彼女の肩を乱暴に掴むと、下駄箱へと押し付けた。
「きゃっ……!」
男子の手が入ったことで、彼女の表情は途端に恐怖を帯びる。
「この人を誰だと思ってんだ」
ダアン! と大きな音を立てて、彼の手が女の顔の横を殴りつける。
下駄箱の殴られた部分が、少し歪んだ。
女の表情から戦意は消失し、ただただ俯いて震えている。
もはや彼女に逆らう意思がないことを確認すると、私はその様子を呆然と眺めていた女達に目を向ける。
「私を、あなた達と同じ場所に立つただの同級生と思わない方がいいわ」
彼女達は私から目を逸らし、この場から立ち去りたそうにしていた。
だが彼女の背後には私の取り巻きがいる。
ことが終わるまで逃しはしない。
「でも幸運ね、あなた達には選択肢をあげるわ。まだ入学して二日目だもの、私の力に気付かず馬鹿な真似をしたとしても少しは甘く見てあげましょう」
先程一番甲高い声で喚いていた女の頬に手を添える。
彼女は小さく悲鳴をあげながら身を竦めた。
「今後私に逆らわないなら、二度と関わらないで居てあげる。でも……」
これ以上ないほどに低い声でまくし立てると、渾身の力を込めた眼力で彼女を捉え、睨みつけた。
既に敵方は皆怯え、震え上がっている。
私に逆らう気がないのは明白だ。
でも、念には念を。
「もし今後も伶音君に近寄るのなら、彼を好きになったことを後悔するほど、叩きのめしてあげるわ」
頬に触れた手に力を込め、思いっきり彼女を突き飛ばす。
女は仲間に向かって倒れ込んだ。
「ご、ご、ごめんなさい!!」
それが最後の止めとなり、彼女達は全員その場にへたりこんだ。
昨日伶音君の周りで騒いでいた子達だ。
憎々しげに私のことを睨んでいる。
憧れの王子様の前で恥をかかされたこと、私が彼と名前を呼び合うことが気に入らないのだろう。
中学時代からファンの間では不可侵協定が結ばれていたらしく、抜け駆けや過度な接触は禁止だったのだそうだ。
そういう訳で伶音君は中学3年間誰とも付き合うことなく終わったのだという。
そして、その均衡を高校入学初日に乱したのが私だったのだ。
そのような事を、ギャンギャンと喚く彼女達の耳障りな言葉から解読することが出来た。
知るかそんなもの、というのが正直な感想だ。
中学の頃にどんな馬鹿馬鹿しい協定が結ばれていたとしても、私には関係ない。
そんなしがらみにとらわれず、私は私の思うとおりにやらせてもらう。
手始めに、このうるさい女を黙らせなければならない。
彼女達はいずれ私の邪魔になるだろう。
将来の足枷の芽を摘んでおくのだ。
「弱者の集団の癖に、うるさいわね」
リーダー格の女を睨みつけ、低い声で言うと、それが合図だったかのように下駄箱の影から10人程の男女がわらわらと姿を現した。
全員中学時代の私の取り巻きだ。
正直この展開は予想できていた。
昨日の時点で収集をかけておいたのだ。
昨日は女子のみを集めたが、それが私の全力だと思われては困る。
先程まで騒いでいた彼女らは、突然現れた集団に驚いている。
「これからは私の行動範囲内で、好き勝手できると思わない方がいいわ」
リーダー格の女と、お互いの鼻がぶつかりそうな距離にまで近づく。
頭頂部に黒が見えた中途半端な金髪。
派手な見た目をした彼女の口元がひきつった。
「この私を敵に回して、それでもまだ平和な生活が送れるなんて妄想、するだけ無駄よ」
「いきがったことぬかしてんじゃ……」
「口を慎みなさい!」
気丈ぶって言い返そうとする彼女の言葉を遮り、ぴしゃりと言い放つ。
男子のひとりが彼女の肩を乱暴に掴むと、下駄箱へと押し付けた。
「きゃっ……!」
男子の手が入ったことで、彼女の表情は途端に恐怖を帯びる。
「この人を誰だと思ってんだ」
ダアン! と大きな音を立てて、彼の手が女の顔の横を殴りつける。
下駄箱の殴られた部分が、少し歪んだ。
女の表情から戦意は消失し、ただただ俯いて震えている。
もはや彼女に逆らう意思がないことを確認すると、私はその様子を呆然と眺めていた女達に目を向ける。
「私を、あなた達と同じ場所に立つただの同級生と思わない方がいいわ」
彼女達は私から目を逸らし、この場から立ち去りたそうにしていた。
だが彼女の背後には私の取り巻きがいる。
ことが終わるまで逃しはしない。
「でも幸運ね、あなた達には選択肢をあげるわ。まだ入学して二日目だもの、私の力に気付かず馬鹿な真似をしたとしても少しは甘く見てあげましょう」
先程一番甲高い声で喚いていた女の頬に手を添える。
彼女は小さく悲鳴をあげながら身を竦めた。
「今後私に逆らわないなら、二度と関わらないで居てあげる。でも……」
これ以上ないほどに低い声でまくし立てると、渾身の力を込めた眼力で彼女を捉え、睨みつけた。
既に敵方は皆怯え、震え上がっている。
私に逆らう気がないのは明白だ。
でも、念には念を。
「もし今後も伶音君に近寄るのなら、彼を好きになったことを後悔するほど、叩きのめしてあげるわ」
頬に触れた手に力を込め、思いっきり彼女を突き飛ばす。
女は仲間に向かって倒れ込んだ。
「ご、ご、ごめんなさい!!」
それが最後の止めとなり、彼女達は全員その場にへたりこんだ。