先生、聞いて。
Spring_



春___それは出逢いと別れの季節。






人生は多くの出逢いと別れで出来ている。ただ、それが春に多いだけ。




大好きだった前担任ともキチンとお別れをしたから寂しくなんてない。






そんな思いで始まった中学3年生の春。









まだ身体に合わぬ大きな制服に身を包んだ新入生は不安と希望に満ちている。




「~であるから安心してより良い学校生活を送ってください。」



そんな生徒会長の言葉を耳に入れながら私、大野 空が考えているのは新任の先生のこと。






去年の担任の先生から優しい先生だとは聞いた。あの先生がいるなら間違いない。






去年の担任の先生は沢山私と遊んでくれたから凄く信頼している。



いつからか私は先生と遊ぶために学校に来ている。ワガママって言われるのも、もう慣れた。今年、一緒に遊んでくれるのは多分その新任の先生。







私が先生と遊ぶようになった理由?






別に大したことではない。







親からも友達からも見放され、物心がつく前には1人だった。寂しい。構って。死にたい。負の感情は波のようにどんどん押し寄せてくる。

裏切られるのは怖いくせに1人でいるのも怖い。いつも他人の目を気にして教室の隅で本を読んでいるのも、もう疲れた。体が弱くて、教室にいけてない時期も長いから教室に行くと気が狂いそうになってしまうだけ。









いつしか、先生達なら私の寂しさを紛らわせてくれることに気付いた。何故なら、先生達はそれが仕事だから。所詮教諭と生徒の関係。


それに、卒業したら縁まで切れる。なら、卒業するまでに沢山構ってもらっておこう。そんな甘い考え。





沢山構ってもらったら、別れが悲しくなるのは分かっている。だから新任の先生と遊ぼうっていうことだ。






過去を振り返っていたら、入学式も終わり、知らない人に声をかけられた。



「えっと…大野 空さんかな、俺、新任の松本厚輝って言います。1年間、たくさん話そうね。」




どうやらこの人が今年遊んでくれる先生らしい。なかなかのイケメンで、何より声が透き通ってて綺麗。




第一印象はそれだけ。



軽くお辞儀をして、松本先生の目を見る。
大丈夫、そう自分に言い聞かせた。





「教室いこう」先生は言う。









私は体や心が弱く、保健室に毎日登校していたので教室に行くという考えはなかった。1度、無理矢理に先生が教室に連れていったら、倒れて、それがトラウマになった。そこから先生達は教室に行かないことも許してくれた、というより諦められたのだろう。








そんな私でも松本先生となら教室にも行ける気がした。毎日悪いこの体調もあまり気にならなかった。






「先生、聞いて。」














「どうした、話?いいよ。言ってみて。」








まさに求めてた返答。落ち着いて話を聞いてくれる先生に出逢いたかったから。









これは、1年間頑張れるかもしれない_____
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