初恋
その夜、時間をかけて振袖を着せてもらい髪も結って貰った。


「紫月~ 見てみて!」


振袖を着た葵が紫月の待つリビングへ興奮しながら入ってきた。


「よく似合っているよ 可愛い」


「ありがとう♪お腹がちょっと苦しいけど、着物大好きっ」


こんなに喜んでくれる葵に紫月は選んだ甲斐があったなと思った。


「行こうか」



* * * * *



青年はカシミアの黒のロングコート、隣の彼女は真っ赤な振袖。



2人が目立たないわけが無かった。



「大丈夫か?」


口数の減った葵に紫月が聞いた。


「うん 少し足が痛くなっただけ」


最初は意気揚々と参拝の列に並んでいた葵も自分の番が来る頃には足は痛み疲れ始めていたのだ。



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