初恋
「紫月が帰ってきたよね?」


腕を榊に掴まれた葵は振り返ると言った。


「葵ちゃん?」


「ねえ?紫月、帰ってきたよね?」


オウムのように繰り返す葵の目から涙があふれ出てきた。


「葵ちゃん、落ち着いて 話をしよう」


榊はソファーに座らせようと葵の肩にそっと手を置いた。


「なんで話をするの?紫月がリビングにいるのに」


「葵ちゃん、分かっているだろう?紫月は・・・」


「いやっ!言わないでっ!紫月は死んでなんかいないんだから!」


両手で耳を塞いで頭を大きく何度も振る。


そんな葵を見て恭臣は胸が痛い。



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