スイートルームで、一晩中



「そもそも、クリスマス前日に男に捨てられたお前が悪い。それをわざわざ俺は付き合ってやってるっていうのに」

「私だって好きでフラれたわけじゃないです!」



そう。1年付き合った彼氏と『クリスマスは一緒に過ごそう』と予約した、この高級ホテルのレストランとスイートルーム。

ところが、つい一昨日のこと。彼には他に本命の彼女がいたことが発覚し、それを問い詰めたところあっさりとフラれ……。



ショックを受けると同時にふと頭によぎったのは、『ホテル予約したのに、どうしよう』だった。



食事も宿泊も、キャンセルをしてもお金はかかってしまう。けれど宿泊はともかく、ひとりで食事は虚しすぎる。

『食事だけでも』と友人たちを誘ってみたものの、皆当然予定があるとのことで断られてしまった。

その結果、たまたま予定がないとのことだった会社の先輩である三宅さんが名乗りを上げ、一緒に食事となってしまったわけで……。



ウェイターにワインをもう一杯頼むと、私は皿の上の魚のソテーをばくっと口に含んだ。

そんな私の仕草に、彼はバカにするよう鼻で笑う。



「色気のない食い方」

「ほっといてください!」



悪かったですね!

ふんっ、と鼻息荒く顔を背けた。



< 2 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop