スイートルームで、一晩中
この男、三宅光希こと三宅さんは、私が働く建築会社で同じデザイナーとして働く3つ年上の先輩だ。
綺麗な二重の、やや中性的な整った顔をしている彼。
背だって178センチくらいあって、見た目がいいのはもちろん、仕事もできるし面倒見もいい。
そんな三宅さんとはなにかと仕事で一緒になったり、ぶつかったり、と何年も繰り返すうちに男女としての雰囲気はなくなり……。
どちらかといえば、ライバルのような、いい仕事仲間という関係になっている。
そんな三宅さんに、同情されるかのようにクリスマスに食事に付き合ってもらうなんて、悔しい。
けれど、キャンセル料であるコース料理の半額の値段を食べずに払うと思うと、そちらの方が悔しい。
私のお給料から見て決して安くはない金額だ。予約する時だって、ちょっと決意が必要だったくらいだ。
相手が三宅さんっていうのが複雑だけど、こんないいお店で食事なんて滅多にできないし……もう、いっそのこと堪能してやるんだから!
頭の中で割り切って、添えてある野菜にフォークをのばす。
そんな私をチラリと見て、彼はワイングラスに口をつけた。
「だいたい、倉田は男の趣味悪すぎなんだよ。売れないバンドマンだの、女好きのチャラ男だの……」
「うるさいですよ、尽くすのが好きなんです!ほっといて!」
「尽くすどころか搾り取られて捨てられてるじゃねーか」
うっ……。
正論すぎて耳が痛い。