その恋、逃亡中。

信二の口から出たのは、声とは言えなかった。自然に吐き出された息が、声帯を震わした結果、音になったという感じである。

信二の手には、どす黒い血が、掌一面についていた。手だけではない。白いワイシャツにも、血の飛沫を浴びたような、赤い斑点があった。

信二の眼の色が、急に変わった。そして、再び、くるみに飛びかかりかけた。


< 15 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop