その恋、逃亡中。
「うるさいな。そんなに、血、血と珍しそうに言うことないじゃないか?血をこわがるなんて、古代人のすることだ」
「そんなことを言っても……」
くるみは口をとがらした。信二に対していままでにない不信感を抱いた。
「くるみ、話があるんだ」
信二が、急にいずまいを正した。
「ちょっと待ってね」
くるみは収納ケースから別のブラウスを出して、素早く身につけた。信二には前にクリーニングにだしておいた、彼のスポーツシャツを投げてやった。
「なあに?まだ別れ話をしようというの?」
と、くるみは信二の前に座りながら言った。決して、挑戦するという気はない。湿った口調を避けるつもりだった。