その恋、逃亡中。
くるみの部屋は、窓が東に面している。そのため、朝は早いうちから陽がさす。むろん、カーテンは閉めてあるのだが、カーテンは隙間が出来ていることもあった。
くるみがまぶしさを感じて眼を開けると、すでに、信二は床のそばにあぐらをかいていた。上半身は、シャツ一枚だが、ズボンもちゃんとはいている。起きたばかりというのではないようだった。
彼は新聞を畳の上に拡げ、それに覆いかぶさるようにして、視線を走らせていた。片手に煙草を挟んでいるが、灰がズボンの上に、だらしなく落ちていた。