その恋、逃亡中。

6.



くるみはすでに、一つの仮説を作り上げていた。それは、信二が最後に訪ねて来た夜、彼に問いかけようとして、無理に押しやった結論と同じものであった。

あのとき、彼女は、
『じゃあ、この血は?』
と聞きながら、それの解答を、秘かに自分で持ったのだが、辛うじてそれを抑えたのである。まだ《まさか…》という気持ちが働いていた。

しかし、いま、彼女はその解答が恐らく間違ってはなかったのだろうと、考え始めている。電話の内容が、それを裏付けていた。


< 41 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop