その恋、逃亡中。

―――そう考えると、彼女は恐ろしくなり始めた。

信二の犯した事件が、どの程度の規模のものか知らない。しかし、警察が追い始めていることは、確実であろう。だからこそ、彼は現在、逃げているのだ。

その警察が、今後、くるみの存在に気がつかないという保証はなかった。今日にも、彼女のアパートに姿を現し、信二のことを、あれこれ尋問するかもしれない。

《そうなってからでは、すでにおそい》いくら、くるみが信二の逃亡先を知らないと述べても、警察は承知しまい。彼女のアパートには、刑事が張りこみ、外出のたびに尾行がつく。考えただけでもいやであった。

< 46 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop