棺の中の冬
だけど、私が探しているものは本当に大切なもので、失ってはいけない『モノ』だった。
そんなに大切なもののはずなのに、今ではもうそれが何なのか思い出せないでいる。
でも、それが本当に大切だった。
それだけは、心が、体が覚えている。
だから、今でも探すことをやめずにいる。
私が探すのをやめてしまったら、それが見つかることは二度となくなってしまうから。
だから、私は探すの。
大切な、大切な、何かを。
私はここをずっと歩き続けている。
私が歩いてきた道を、足跡が残している。
ここに降り積もる雪は、もうずっと溶けることなくここにある。
私の足跡を残す雪は、何にも染まらない白でそこにあった。
足元を見降ろすと、また、私の足跡ができている。