架空ナル世界デ死ノゲーム
* * *
残り10分で始まるというのに、ど子に隠れていようかとまだ迷っていた。
確か、3階にジムがあったはず…。
急いで階段を上がり、ジムの扉の前に立った。
とりあえず誰かいるのか分からないので、ノックして入ってみる。
「失礼します、誰かいますか?」
すこし軋んだ音を立てながら扉を開けた。その先にいたのは、意外な人物。
ジムとは無縁そうな小さい体で、可愛らしい童顔を真っ青にしている女の子…湖沼鞠さん。
その近くで不機嫌そうな顔を浮かべて、金属バットを持っている明城リンヤ君。
性格が真反対ともいえる2人が一緒にいるのはなんとも不思議な光景。
「あ…お邪魔でした?」
「邪魔じゃねーし!」
イライラしたとげのある声で反論した。鞠さんはよほどリンヤ君が怖かったのか、安堵したような顔で目に涙を浮かべている。
このまま和みそうな会話を続けてもいいのだけれど、時間が余りなかったので近くの押入れみたいなところを開ける。
ガラガラガラッ……
中は、そんなに物は置かれてなく、ほこりっぽくもなかった。3人隠れてもそこまでキツキツにならなそうだ。
そのまま一方的に鞠さんを睨んでいるリンヤ君と、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっている鞠さんに声を掛けた。
「あの、ここなら3人隠れられると思いますよ。もうあと2…1分で始まります」
「さっさと言えや!!」
「…あっ……はいっ……」
モソモソと隠れた。暗くてあまりよく見えないけれど、目を細めれば何となく大丈夫だと思う。
…あと5秒…4、3…2…1…
ピーンポーンパーンポーン…
ありきたりなチャイムが、またなった。