架空ナル世界デ死ノゲーム

『それでは、釜中の魚ゲームを始めます』


 クラハシさんの声が、ビル中に響く。


 手汗を感じながら、息を殺した。



 ………


 …



「…リンヤ君」


「…なんだよ」


 だんだん暗闇に目が慣れてきて、今ではもうだいぶ2人の顔が見える。表情も、読み取れるぐらいだ。



「…誰も来ません」


「……いいんじゃねーの?」


 
 いや、そりゃ誰も来ない方がいいとは思けど…。


 ふぅ、と少し安心したような、安堵したような声が隣から聞こえてくる。


 リンヤ君の方ばっかり見ていたけれど、1つ年下の小さい子がいることをすっかり忘れていた。



 暗かったのもあるけれど、見えるようになってきてからはかなり顔が真っ青だと分かる。


 
 肩が触れるけれど、何となく震えているように感じた。


「あの、大丈夫ですか?」


 鞠さんはちょっとポケ~としていたけどすぐハッと顔を上げて答える。



「あっ、えっ、あっ…だだだ大丈夫ですっ…って、わた、私のこと…ですか?」


「テメェ以外に誰がいんだよ?」


 
 リンヤ君の声にびくりと肩を跳ねあがらせた。


 涙で潤ませていた顔がさらに涙でいっぱいになっていく。


「ひっ…すすすみませ…」



 ——————ガチャ


 誰か入ってきたことに、全員がびくりと肩が揺れた。


 ピチャリ…ピチャリ…


 なにかがしたたり落ちる音がする。それは一定のリズムを奏でていた。


「……怪我?」


 もしもそれが血で、誰かが怪我をしているのならば、すぐに手当てしなければいけないと思った。


 …直感って言ってもいい。


 よくよく考えてみれば、ほんの少しの呼吸の乱れも、悲鳴も聞こえてこなかったことも分かるのに、今の僕にはそんなの考える余裕なんてなかった。



 バンッ


 気付いたら、扉を開けてしまっていた。










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