浅葱色の妖
寝間着で外に行く訳にはいかないと思って辺りを見回すけど、当然、新しい着物が置いてあるわけがない。
仕方ない、昨日着ていた着物を着るしかないか。
珍しく自分で目覚めてすっきりとした気分で帯を解く。
「おい朝だいいかげん起きろ」
低い声とともに部屋の襖が素早く開かれる。
「うわあぁぁっ!」
突然人が入ってくるなんて思わず部屋中に響き渡るような声で叫び、開きかけた着物の衿を凄まじい速さで閉じる。
「んだその声は。女ならもっと女の声で驚け」
片耳に指を突っ込んでうるさいとでも言うように嫌そうな顔をした土方さんが立っていた。
「あんたねぇっ!そういう問題じゃない!早く出てって!」
帯を締めていないものだから立つこともできず、座ったままできる限りの大声を出す。
「何故だ。ここも俺の部屋だぞ」
「知らないそんなこと!どうでもいい!女の子が着替えてるところに入って来てずっと居座るとかなんなのよ、助平!」
「助平だと?男なら誰でも同じ行動を取ると思うぜ」
「取らない!この変態男!」