浅葱色の妖








「お春さん!!」





台所に入るなり私は叫んだ。






お春さんは包丁を握り野菜を切っている。







「なんやどうした?」






野菜を切る手を止め、面食らったようにお春さんは私を見た。






「今、もう昼なんですか!?」






私がそういうと、お春さんは目をぱちくりさせる。







「せやで」







驚いたままお春さんは言葉を落とした。








やっぱり、やっぱり昼だったんだ。






旭がいないのに起きられたなんて大きな勘違い。






旭がいないとやっぱり私は起きられなかった。





「すみません!本当にすみません!もう何でもします!朝餉を作らなかったんで昼餉は私が!」





とにかく私は平謝り。





謝ればいいってものじゃないけれど、ひたすら謝る。





初仕事に寝坊するだなんて、私はとんだ駄目女です。
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